悪夢の花(その4)
このままでは、僕は完全にパプリのあやつり人形となっ
てしまう。何としてでも、パプリの呪縛から逃れなくて
は・・・僕は、20頭のヤンピーの調教を始めた。これ
が残された最後の手段だった。一頭ずつではハチミツを
使われてかわされるが、一度に集団で襲わせれば、ハチ
ミツを使う暇もない筈、という考えからだ。

元々僕になついているヤンピー達を仕込むのは比較的容
易であった。調教は無事終わり、後はパプリが来るのを
待つばかりであった。ヤンピーに襲われれば、さすがの
パプリも立ち去り、僕は自由になれるだろう。もう少し
だ、もう少しの辛抱だ・・・。

「来た!!」

パプリが現れた。僕は、ヤンピー達に合図をし、一斉に
パプリに襲いかからせた。たった一人の少女に20頭の
熊をけしかける事に、ここに来て良心が痛んだが、最早
なりふり構ってはいられない状況である為、今更止める
事も出来ない。出来るのは、この直後に起こるであろう
惨劇に備えて、目を背ける事だけだ。

だが、パプリに背を向けようとしたその瞬間、僕は信じ
られない物を目の当たりにした。何とパプリが、次々と
ヤンピーをジャンプでかわしていくのだ。軽く3メート
ル以上は跳んでいる、人間離れしたジャンプ力で。

「そ、そんな・・・そんなバカなああああ!!」

僕は思わず悲痛な大声を上げた。あまりの驚きと恐怖で
凍り付いた僕に、ランランと目を輝かせつつ薄笑いを浮
かべたパプリが近付いて来る。よく見ると手には、例の
花が握られている。

1頭、2頭、3頭・・・難なく次々と飛び越えて来る。
7頭、8頭、9頭・・・連続で襲いかかっても全く動じ
ない。13頭、14頭、15頭・・・紙一重でかわして
いる。そして19頭、20頭・・・遂に全てのヤンピー
の攻撃をやり過ごし、僕の下へ・・・。

「ミ〜〜〜ン〜〜〜ト〜〜〜く〜〜〜ん〜〜〜!!」
「あ・・・あああ・・・うわあああああああああ!!」

パプリに抱きつかれると、僕の意識は遠のいていった。

薄れていく意識の中で、僕はパプリの声を聞いていた。
「フフフ、ミントクンハモウ、アタシノモノ・・・。」


























朝だ。今日もいつもと同じ朝だ。窓の外にはヤンピーが
いる。ミツバチもいる。そして花園には真っ赤な花が咲
き乱れ、そこで花摘みをするパプリがいる。

ああ、パプリ、パプリ・・・今日も僕の為に花を摘んで
くれるのかい?ありがとう。君は素敵だ、最高だ。君が
何者で、どこから来たのか未だにわからないが、もうそ
んな事はどうでもいいんだ。コッコ、ごめん。もう君に
は逢えないよ。僕はもうパプリ無しでは生きていけない
んだ。ああパプリ・・・パプリ・・・パプリィ・・・。


悪夢の花


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