戦争か和平か
実に3年以上もの長い間、新機種も後継機種も登場しな
かったTVゲーム機が、いよいよ動き出す様です。5月
に行われた米国のゲームショウ(E3)にて、現行3機
種の新機種が初お披露目となりました。日本でも、開催
が間近に迫っている東京ゲームショウで、やはり何らか
の発表がある事でしょう。

意外に思われるかも知れませんが、日本でTVゲームが
発売されて以来、3年以上新機種或いは後継機種が発売
されなかった事は、過去に一度もありませんでした。そ
れだけに、今回発表された現行3機種の新機種に寄せら
れる期待は、ユーザーにとっても業界関係者にとっても
相当なものであろうと推測されます。

さて、そんな新機種が発売されると、ゲームマスコミが
こぞって書く記事が「ハード戦争」の話題。要するに、
同時期に発表・発売される数機種のハードの中で、勝つ
のはどれか、最も売れるのはどれか、という記事です。
また、ユーザーについても同様で、この時期はネット上
を始めとした各所で、これに関する議論は数多く展開さ
れています。これも、これまでゲーム業界が培ってきた
「常識」の一つと言えます。今回はこの「ハード戦争」
の「常識」について書いてみたいと思います。

ズバリ言ってこの「ハード戦争」、不毛な物だと思いま
せんか?私にはどうもこれが有意義であるとは思えない
んですよ。

ハードメーカーが新規種を発売するのはいいのですが、
それによってユーザーのみならずソフトメーカーの負担
も増大するのは容易に想像出来ます。ユーザーがハード
を、ソフトメーカーが開発機材を購入する為の「金」、
ソフトメーカーが開発能力を上げる為に新たに必要にな
る開発スタッフ、つまり「人」・・・この2つがより多
く必要になるのです。そしてそれは、各ハード陣営が力
を入れれば入れる程、より増大していくのです。いかに
も「戦争」ですよね。「金」と「人」の負担は少しでも
減らしたいとは誰もが思う事。ならば、こんな「戦争」
は避けるべきでしょう。

とは言え、新機種が全く登場しない状態が続くというの
も宜しくありません。それはつまり、ゲームマシンの進
化が止まっている事を示し、TVゲーム業界の先細りに
繋がる事は目に見えているからです。

ですから私は、新規種は出て、且つ戦争が起こらない状
態が最も理想的であると思うのです。その為にはどうす
ればいいのでしょうか?答えは一つ。TVゲームマシン
の統一規格を作ればいいのです。現在の主力ハードメー
カーが技術提携を結んで。

要するに、現代で言えばマリオもポケモンもドラクエも
FFもグランツーリスモもどこいつもデッドオアアライ
ブもHALOも、ぜ〜んぶ動作してしまう様なハード、
一台買えば現行のソフトが全て動作可能なハードの規格
を作り、ゲームメーカーはその規格を基にハードやソフ
トを製造・開発すればいいのです。

正に夢の様な話ですが、これ、本当に実現すればいい事
ずくめだと思いませんか?ユーザーにとっても、小売り
店にとっても、ソフトメーカーにとっても、更にハード
メーカーにとっても。

ユーザーの立場にしてみれば、「あのゲーム欲しいけど
持ってるハードじゃ遊べないよ〜」なんて事もないし、
ハードをいくつも買い揃える必要も無ければ、その置き
場所に苦労する事もありません。勿論、周辺機器を機種
毎に買い揃える必要もありません。また、最近よくある
事ですが、あるソフトがAというハード対応で発売され
たので買ったけど、その僅か半年後に追加要素を含めた
リニューアル版がBというハード対応で発売され、メー
カーに裏切られた様な思いをした、なんて事もありませ
ん。

小売り店の立場でも有り難い事の筈です。ソフトや周辺
機器の陳列にしても、ハード毎で別コーナーを設ける必
要も無ければ、そのスペース確保に頭を悩ませる事もあ
りません。何より、威勢のいいオバチャンに、「このソ
フト買ったんだけど、ウチのPS2じゃ動かなかったわ
よ!!どういう事!?」などとXboxソフトのケース
を掲げて怒鳴り込まれる、といった事態を回避出来るの
は大きいでしょう。

ソフトメーカーから見てもこの規格は大歓迎でしょう。
ハード毎に開発機材を揃える必要も無ければ、ハード毎
にスペックを研究し、それぞれの特性に合った開発を個
別に行わなければならない、なんて事もありません。当
然、同一タイトルを機種毎に開発、しかも全て同時発売
などと、只でさえ厳しい開発スケジュールが殺人的にキ
ツくなるという事もないでしょう。また、売り上げに対
する利益にしても大きく違う筈。仮に、あるタイトルが
30万本売れたとしても、「1つのハードで30万本」
と「Aハードで25万本、Bハードで5万本」では、採
算分岐点を考慮した利益はハッキリ違ってくる筈です。

では、ハードメーカーにとってはどうでしょうか?ハー
ド開発の労力が凄まじい物になるだけで、メリットは殆
どないのでは・・・?と思いきや、実は現在のゲーム事
情を考慮すれば、そんな事は決してないのです。

現在の主力ハードメーカーは、ソニー、任天堂、マイク
ロソフトの3社ですが、この中で日本国内でのTVゲー
ムハードのシェアは、ソニーが大半を占めています。で
すから、もしハードの統一規格が生まれて、ハードメー
カーはその規格内でしかハードを作れないとしたら、単
純に考えればシェアは平等に3分割される事になり、他
の2社は今以上のハードの売り上げを期待出来る事にな
ります。そう考えると、ソニーだけが損をする構図にな
りますが、ソニー側としてもメリットがあります。任天
堂とマイクロソフトは現在、ソニーよりも自社ブランド
のソフトコンテンツが強力なのです。その2社のソフト
が同一マシンで動くとなれば、ユーザーは更に増える筈
です。少なくとも、どんなソフトでも動くハードである
という「安心感」から、購入に踏み切る人が多くなると
思われます。結果的に、ハード市場全体が大きくなる事
に繋がり、ソニーだけが損をするという事にはならない
と思います。

単純にハードシェアを3分割するという構図が納得出来
ないのなら、ハードの規格はそのままで、ハードの付加
価値を上げる努力を怠らない事が必要でしょう。本体の
カラーバリエーションを増やす、限定版を出す、ソフト
や周辺機器を同梱してセット価格で販売する、中身は同
じでも外見はコンパクトサイズにする、或いは廉価版を
売り出す等、規格は同じでも他社との差別化を図る方法
はいくらでもある筈です。ユーザー側としても、豊富な
バリエーションのハードの中から自分の好みに合わせた
物を選ぶといった楽しみも増えるので有り難い話でしょ
う。物によっては買い換えや複数台購入に踏み切るユー
ザーも現れる事でしょう。

ハードメーカーの皆さん、当HP内でも過去に何度か話
題になったこのゲームハード統一規格構想、越えるべき
ハードルは多数あると思われますが、過去にPCの統一
規格「MSX」を生み出した実績のあるマイクロソフト
も参画するなら、決して不可能ではない筈です。実現に
向けて前向きに検討して頂けないでしょうか?今はもう
「戦争」ではなく、「和平」に向かうべき時代なのです
から。


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