ハード信者
(その1)
ここは大手ゲームショップ。今日は話題の新作タイトル
が数多く発売される日。その為現在、多くのゲーマーが
レジに並んでいる。曽弐は、自分の目的のソフトを購入
した後、レジ前のその行列を、彼がネット上で知り合っ
たゲーム仲間数人と一緒に眺めていた。
「お、あいつ『鬼侍』買ってるぜ。あれ結構デキがいい
んだよな。」
「こっちの奴はPS2本体ごとだとよ。やっぱりPS2
は売れてるよなあ。」
仲間がレジ前の行列の「批評」をしていると、曽弐が口
を挟んだ。
「ま、当然だね。今のPS2は向かう所敵なしだから。
今時PSやPS2以外のハードやソフトを買う奴の気が
知れないな!」
「だよなあ。」
「まあな。」
仲間は相槌を打った。
曽弐は再びレジに目をやった。すると、一人の男がレジ
係にソフトを渡していた。それを見て、曽弐は思わず声
を上げた。
「ハハッ!何だアイツ、DCの『幻想星ネットワーク』
買ってるよ!あんなクソハードのゲーム、よく買う気に
なれるよなあ!」
すると次の瞬間、
「あんなクソハードのゲームで悪かったですネェ。」
「うわあああ!」
いつの間にか男は、曽弐の真後ろに立っていた。突然声
をかけられた曽弐は腰を抜かした。他の仲間は、驚いて
店の外へ逃げて行った。
曽弐は、動揺しつつも男に話しかけた。
「ななな、何なんだアンタは!急に後ろから!」
「それはこっちのセリフですヨ。ワタシが何を買おうが
アナタには関係ないでしょう。」
「ああ、さっきのあれか。何だ、聞こえてたんだ。」
「あんな大声で言われれば、誰だって聞こえますヨ。」
「ハハ、悪かったな。アンタがそんなクソゲー買ってい
るの見たもんだから、つい声がデカくなっちまって。」
男は、ソフトのパッケージを見ながら尋ねた。
「これは、つまらないゲームなのですか?」
「ああそうだよ。だってDCのゲームだぜ?あのSGマ
ニアとギャルゲーオタク専用ハードの。そんなもんクソ
に決まってるじゃねえか。」
「はあ、そうですか・・・。」
少し間を置いて、男は再び尋ねた。
「それで、これはどういうゲームなのですか?」
「あ?そんなもん知らねえよ。」
「あれ?そうなのですか?先程ああまで言われていたの
で、てっきり既にプレイして内容を存じているものとば
かり思っていましたが。」
「やらんでもわかるさ。DCのゲームがクソだって事く
らい。」
「何故わかるのですか?」
「え?だ、だから、SGマニアとギャルゲーオタク専用
の・・・。」
「それは偏見ではありませんか?DCにだって、面白い
ゲームは沢山ありますヨ。それに、ろくにプレイもせず
に一方的につまらないと決めつけるのは、良くない事だ
と思いますが。」
それを聞いて、思わず曽弐の声が大きくなった。
「ガタガタうるせえな!!一体何なんだアンタは!?」
「申し遅れました。実はワタシ、こういう者です。」
男はそう言って名刺を差し出した。

 ゲーマーのココロのスキマ 
お埋めします

喪黒外夢造

曽弐は渡された名刺を見た。
「ゲーマーのココロのスキマ、お埋めします・・・?」
「悩めるゲーマー様の手助けをする事が、ワタシの仕事
なのです。」
「・・・よくわかんねえな。」
曽弐は首をかしげていた。喪黒はそれに構わず尋ねた。
「どうです?アナタのお悩みも解決して差し上げましょ
うか?」
「あ?今の俺に悩みなんて別にねえよ。PSやPS2の
ゲームで遊べれば、それで十分満足だしな。」
「何故PSとPS2なんですか?」
「そりゃ決まってるだろ?今一番売れていて高性能な、
正にナンバーワンハードだからさ。だから当然俺もPS
2ユーザーさ。」
「なるほど。DCは持っていないのですか?」
「持ってる訳ねえだろ!あんなクソハード。」
「では、実際にDCのゲームをプレイされた事はありま
すか?」
「う・・・ね、ねえよ。」
「おやおや、ろくにプレイしてもいないのに、DCはク
ソハードだと仰る。随分と大胆なご発言ですネェ。」
「だ、黙れ!じ、実際世間も認めているじゃねえか!P
SやPS2と比べて、DCはどのくらい売れているって
言うんだ!?」
「ハードのシェアだけで、そのハードの善し悪しを語る
事は出来ませんヨ。大事なのは、肝心のゲーム内容その
ものです。」
「ぐ・・・そ、そのくらいわかってる!」
「ならば、どういう根拠でDCをクソハードと断言され
るのですか?」
「そ、それは・・・。い、いいじゃないか何でも!」
「よくありません!DCユーザーの一人として、アナタ
の発言は無視出来る物ではありません!!」
喪黒は、曽弐の顔面に人指し指を突き付けた。曽弐は、
思わず小声で呟いた。
「な、何だよコイツ、ひょっとしてSGの狂信者か?」
喪黒は、それを聞き逃さなかった。
「何ですって?ワタシが狂信者ですって?」
「うわあ!」
2人のやりとりに対し、店内の客が騒ぎ始めた。店員も
迷惑そうな顔つきで2人を見ている。
「ここは場所がよくありませんネェ。落ち着ける場所で
じっくりお話しましょう。」
「うわ、は、離せ!」
喪黒は、強引に曽弐の腕を引っ張りながら店を出た。

(その2へ続く)



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