ハード信者
(その4)
帰宅した曽弐は、MULTI−Xの起動準備をした。
「さてと・・・これで本当に何でも動くのか?」
試しに曽弐は、PS2ソフトの「蝿」を起動してみた。
特に問題はなかった。
「いいみたいだな。さあ、次はいよいよDCソフトだ。
これは・・・え〜っと、『狂気の篭屋』?何だこりゃ?
変なタイトルだな。まあいいや。やってみよ。」
曽弐は慎重にソフトをセットし、パワーボタンをONに
した。
すると、画面にタイトルが映し出された。どうやら喪黒
の言う通り、PS2ソフトとDCソフト、どちらもこれ
一台で動作可能な様だ。
「マジかよ・・・本当にどっちも動くぜ・・・。」
曽弐は改めて、MULTI−Xの凄さを実感し、呆然と
してしまった。
暫くして気を取り直した曽弐は、取り敢えず『狂気の篭
屋』を試してみる事にした。
数十分プレイして曽弐は驚いた。これまで曽弐がプレイ
したどのゲームよりも、この『狂気の篭屋』は優れた名
作だったのだ。また、SGのゲームに触れた事のなかっ
た曽弐にとって、SGの独特なセンスは刺激的でもあっ
た。
「こ、これは凄い!こんなゲームがあったなんて!!」
曽弐は、時間を忘れてプレイに没頭した。
暫くプレイしてすっかり満足した曽弐は、次のソフトを
手に取った。
「よ〜し、次は・・・げげ!『観音』!おいおい、DC
お得意のギャルゲーかよ・・・どうせキャラ萌えの恋愛
モノだろうけど、ま、貰い物だ。少しはやってみてやる
かな。」
曽弐はうんざりした表情で起動した。しかし、曽弐はそ
の後約10数時間、トイレに立つ事すら忘れる程にのめ
り込んでしまった。そしてエンディングを迎えた時、曽
弐は目に涙を浮かべる程感動してしまったのだ。ゲーム
をプレイして泣いた事は、曽弐にとっては初めての経験
であった。
「・・・。」
あまりの感動で、言葉にもならなかった。
曽弐は、その後も喪黒から譲り受けたゲームを次々とプ
レイしていった。驚いた事に、どれもこれも素晴らしい
作品ばかりであった。
そして曽弐は、この感動を他のDCユーザーと分かち合
いたいと思い、ネット上のDCユーザー達との交流を深
めていった。以前の曽弐にとっては論争の相手でしかな
かったDCユーザーも、今や大切なゲーム仲間となって
いた。当然、自分のサイトのSGへのイチャモン専用掲
示板も閉鎖した。
「DCには、これ程の名作があったんだ!ハードが違う
だけで、やりもせずにけなしていたなんて、今まで俺は
なんて酷い事をしていたんだ!DCの素晴らしさを知る
事が出来て本当によかった。DCユーザーとも仲良くな
れたし、これも全てあの喪黒のオッサンのおかげだ!」
曽弐のゲームライフは、この上なく充実していた。

ところが数日後、SG社から、TVゲーム業界全体を揺
るがす大発表があった。何と、DC本体の生産を中止す
るとの事であった。この発表は、当然多くのゲーマー達
にも大きな衝撃を与える事となった。ネット上でも、こ
こぞとばかりにDCの悪口を掲示板に書き並べるPSや
PS2ユーザー、あまりのショックに、自分のDC専門
サイトを閉鎖してしまうDCユーザー等、とにかく騒然
としていた。
「そんなバカな!これからだって言うのに・・・。」
DCの良さを知ったばかりの曽弐にとっても、少なから
ずショックであった。しかし曽弐の中には、
「元々PS2ユーザーだったから、別に関係ないか。」
という冷めた考えがあった事も、また事実であった。
ふと曽弐は、自分がよく利用するチャットルームにアク
セスしてみた。ここは、PSやPS2ユーザーが多く集
まる場所で、情報交換の為にも、仲間同士との交流を深
める為にも、曽弐にとってはネット上の大切な場の一つ
であった。
するとそこも例外ではなく、やはり大騒ぎであった。参
加人数は普段の倍近くに膨れ上がっており、PSやPS
2ユーザーは勿論、DCファンとわかる者まで参加して
いた。
曽弐は取り敢えず入室し、挨拶もそこそこに、特に何か
発言するでもなく、暫く他の参加者の発言を眺めていた
が、程なくして曽弐のPS2仲間の一人が、曽弐のハン
ドルネーム「ソーニ」に話しかけてきた。

バンデ:ついにDC生産中止だぜ。所詮SGのゲーム機
なんてクソだよな。>ソーニ

曽弐は、それを受けて発言しようとした。
「いや、DCも結構捨てたモンじゃねえよ。この前何本
か遊んでみたけど・・・。」
ところが、曽弐が返事を書いている内に、DCファンが
次々と発言してきた。

オーガミー:何だと!DCは最高のハードだぞ!
らおぐる:PS2なんてDCに比べりゃゴミ。あんなの
使えん。

曽弐は、それらの発言を読んでいる内に、既に生産中止
が決定しているハードを弁護するDCファンの姿が滑稽
に見え、自分もまた彼らと同類と見られる事が恥ずかし
くなってきた。更にその反動で、曽弐の中で久しく眠っ
ていたSGへの反発心が涌いてきた。
曽弐は、書きかけていた発言をクリアし、代わりにDC
ファンに対し挑戦的な発言をした。

ソーニ:俺はSGマニアでもギャルゲーオタクでもねえ
から、DCがどうなろうとも関係ねえや。まあ、ここに
何人かいらっしゃる場違いなSG狂信者の方々は黙って
ねえだろうが(笑)。

曽弐の発言を受けて、DCファンが更に反発した。それ
に対し曽弐は更に調子に乗り、次々とDCの悪口を発言
した。

ソーニ:「宇宙放送5」なんて、ただの「パパラップ」
の パクリゲーじゃねえか!訴えられるぞ!
ソーニ:「私怨夢」?何でもかんでも金かけりゃいいっ
てもんじゃねえだろ!

もはや曽弐の毒舌は、留まる所を知らなかった。
深夜から始まった論争チャットは、夜が明けるまで続い
た。

(その5へ続く)



このページの一番上へ

笑ゥげぇむすまん選択画面へ

メインページへ