ゲームコレクター
(その2)
2人は、バー「芸魔の巣」に入り、カウンターに座り水
割りを注文した。
出された水割りを一口飲んだ後、厚目が話し始めた。
「最初は、単純に自分がゲーム内容に興味を持ったソフ
トだけを買ってました。購入したゲームの中には、時々
つまらない物もありましたが、自分が納得した上で購入
していましたし、独自の遊び方も開発したりもして、そ
れはそれで十分楽しめました。」
「なるほど。考えてみたら、ゲーマーとはそういう人種
なのかも知れませんネ。自分なりにゲームの楽しみ方を
見つけて心ゆくまでプレイする、正にそれがゲームを楽
しむ理想形とも言えるでしょう。」
「ええ、仰る通りですね。そうやって一本一本噛み締め
ながらプレイしていく内に、所有ソフトがどんどん増え
ていったのです。」
厚目は再び水割りを一口飲み、更に続けた。
「で、ある日ネット上でとあるゲーム系サイトを覗いて
みた所、MDで発売された全ソフトリストが掲載されて
いたのです。それを見ると、まだ私が所有していないソ
フトが2、30本程ありまして、それで・・・ちょっと
気になってしまって・・・。それに、そのサイトのBB
Sを見ると、『レアな○○をついに手に入れた!!』と
か、『MDソフト、コンプリートしました!!』といっ
た書き込みも多数見受けられまして、それらの影響から
か私も・・・。」
「MDで発売されたソフトを全て集めたい、という衝動
に駆られてしまった、と。」
「はい・・・その通りです。」
「ゲーム内容など二の次で、ですか?」
「・・・はい。」
厚目が弱々しく返事をした。
その後、両者の間に短い沈黙があった。喪黒はチビチビ
と水割りを口に流し込んでいた。程なくして、自分のグ
ラスをボンヤリと眺めていた厚目が、再び口を開いた。
「確かに今の僕は、コレクターと呼ばれても仕方ないの
かも知れません。気がついたら、『遊びたい』という気
持ちよりも、『集めたい』という気持ちの方が強くなっ
ているのですから・・・。」
少し間を置いて喪黒は答えた。
「しかし、やはりゲームは集める物ではなく、遊ぶ物で
すヨ。そんな扱われ方をされては、ゲームが可愛そうで
す。それに、ゲームクリエイターさんだって、面白いソ
フトを作りたいという気持ちはあっても、コレクション
の為だけのソフトを作りたいという気持ちはないと思い
ますヨ。」
「わかってます。それは十分に。正直言って、ゲーマー
からコレクターになりつつある自分に嫌気がさしている
んです。」
「ならばいっその事、当分ゲームの購入自体をやめてし
まわれたらいかがです?」
「勿論それも考えました。ですがそうしようと思ってい
ても、あと10数本で全て集まるという所まで来ている
せいか、つい中古ゲームショップを回ったり、ネット通
販やネットオークションをチェックしてしまうのです。
どうやら、そういったゲームライフが完全に習慣づいて
しまった様で・・・。」
「なるほど。買うのをやめようと思っていても、習慣的
にソフト探索に時間を費やしてしまって、結果として、
ゲームをプレイする時間が激減してしまうと。」
「そうなんです。自分でもそれではいけないとわかって
いるのですが・・・。」
「ふむふむ。では逆に、集めたいソフトをさっさと全て
集めてしまうというのはどうでしょう?そうすれば、余
計な事に時間を取られる事はなくなると思いますが。」
厚目は、水割りを一気に口に流し込み、ため息混じりに
答えた。
「それが出来れば苦労しませんよ。ソフトの中には都心
のごく一部にしか流通しなかった様な、入手が極めて困
難な物もありますし、とても現実的とは思えませんよ。
やはり、時間をかけて根気よく探さないと・・・。」
「では、とにかく全てのソフトを入手出来れば、問題は
解消されるのですね?」
「ええ、勿論です。ですが、そう簡単には・・・。」
喪黒は、水割りを一気に飲み干して席を立った。
「よろしい!私がお力になりましょう。一緒に来て下さ
い。」
「えっ?ど、どちらへ?」
「まァいいからついて来て下さい。」
厚目は、言われるままに喪黒について行った。

(その3へ続く)



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