ゲームコレクター
(その3)
店を出て、裏路地を数分歩いた所で、喪黒の足が止まっ
た。目の前には倉庫らしき建物があった。
「ここです。さ、中を御覧下さい。」
「は、はあ・・・。」
言われるままに、厚目はその中を覗き込んだ瞬間、思わ
ず驚きの声を上げた。
「こ、これはっ!!」
倉庫の中には、MDソフトがズラリと並んでいた。しか
も、コレクターの間でも入手困難とされているソフトま
であった。
「『異生物戦士』、『交戦狂ピュアモルト』、『吸血鬼
殺人者』まである・・・す、凄い!!」
厚目は半ば興奮状態であった。どれもこれも、厚目が長
い間探していたソフトばかりだから無理もない。しばら
くして、喪黒が口を開いた。
「どうです?貴重なソフトが沢山あるでしょう?」
「はい!!・・・ですがこれは一体・・・?」
厚目が尋ねると、喪黒は心持ち重い口調で話し始めた。
「実を言いますとこのソフトは、あるMDソフトコレク
ターさんの物だったのです。このコレクターさんは、M
Dソフトを完全に集められたそうなのですが、残念なが
らコンプリートされてからすぐに、どうしてもソフトを
全て手放さなくてはならない事情が出来てしまい、残念
ながらゲームライフに幕を閉じてしまわれたのです。」
それを聞いた厚目の興奮も冷め、やはり重い口調で答え
た。
「そ、そうだったんですか・・・。さぞかし無念だった
事でしょうね。折角集めたのに、殆どプレイする間もな
く手放す事になるなんて・・・。」
「はい。この方はご自分の過ごされたゲームライフを、
大変悔やんでおられたそうです。」
厚目は、しばらく大量のソフトをボンヤリと見つめてい
た。すると再び喪黒が口を開いた。
「そこで厚目さん。ここにあるソフト、好きなだけ差し
上げます。どうぞご自由にお取り下さい。」
「ええ!?う、受け取れませんよ!そのコレクターさん
が大事にしていた物でしょう?それでなくとも貴重なソ
フトばかりだというのに・・・。」
「いえ、是非お受け取り頂きたいのです。それがこの方
のご希望ですから。」
「え?・・・どういう事ですか?」
「彼はこのソフトを手放す時にこう言われたそうです。
『私のソフトを、ゲームをとことん遊び尽くしてくれる
人にお譲りしたい』と。どうやらご自分がゲーム自体を
殆ど楽しめなかった無念を、他のゲーマーさんに晴らし
て頂きたかったらしいのです。」
「なるほど・・・そういう事だったんですか・・・。」
「ここにあるソフトを何本かお持ちになれば、アナタは
MDソフトの収集活動に終止符を打ち、再びゲーマーに
戻る事が出来るのでしょう?」
「それはそうですけど・・・。」
「でしたらご遠慮なさらずに。このコレクターさんも、
アナタの様なゲーマーさんにお譲り出来るならば、きっ
と満足されると思いますよ。」
「・・・わかりました。では、有り難く頂戴します。」
厚目はそう言って、自分の持っていないソフトを探し始
めた。暫くして、10本程のソフトを選び出した。
「では、これだけ頂きます。」
「どうぞどうぞ。但し一つだけ約束して下さい。このソ
フトは、アナタがコレクターから再びゲーマーとして復
活するキッカケとして、お譲りするのです。だから、今
後はゲーム内容も知らないのに、ただ単に『集めたい』
という理由だけでソフトを購入する様な事は二度としな
いで頂きたいのです。」
「当然じゃないですか!このソフトのおかげで、完全に
ゲーマーに戻れます。もう二度とコレクターになったり
しませんよ!」
「そうですか。それを聞いて安心しました。」
「家に帰ったら、早速今日頂いたソフトをとことんプレ
イしますよ。」
「はい、存分に楽しんで下さい。それじゃ、私はこれで
失礼致します。」
喪黒は軽く頭を下げた。厚目も改めて感謝の念を込めて
頭を下げた。
「喪黒さん、いろいろとありがとうございました!」
「いえいえ、お役に立てて何よりです。」

(その4へ続く)



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